今週の言葉58-塚越寛(その2)-
「寒天の基本物性にとらわれずに、そこからどれだけ逸脱できるかを常に視野に入れろ」
これまでの固定観念を捨てて違う視点からの発想をしてみましょう
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先週に引き続き寒天メーカーの伊那食品工業の会長塚越寛さんです。先週この会社の特徴として従業員の幸せと企業の永続を重視する会社であることと開発型企業であることの二点があると思うと述べました。今回は後者の開発型企業ということについて取り上げてみたいと思います。
寒天は主に羊羹やあんみつなどの和菓子原料として使われていましたが、ケーキなどの洋菓子に押されて市場がどんどん縮小していっており、狭い市場の中で多少シェアが高くたってこれでは先が見えている、と塚越さんは感じたそうです。そこから、今後も伸びていくためには、寒天の新しい用途開発が必須だと思い、寒天の研究に本格的に取り組むことにしたとのこと。何かここら辺は紙と同じですよね。競争相手が多いところでは価格競争になってしまいますが、新しく用途開発したところは価格も取れて収益性も高いということです。
その開発にあたって重視されていることとして塚越さんが言っているのは
「寒天の基本物性にとらわれずに、そこからどれだけ逸脱できるかを常に視野に入れろ」
ということだそうです。例えば、寒天は固まる力があるというのは常識ですが、逆に固まらないという特性を持ったものがどうだろうかと考え、寒天の凝固力を抑えた「ウルトラ寒天」をいうのを開発したそうです。これは、化粧品のファンデーションや口紅などに使われているそうです。
余談になりますが、岡山に林原という世界的に有名なバイオ企業があります。変な宇宙人が出てくるトレハロースのTV CMをやっているので知っている人もいるかもしれません。この会社は元々飴屋さんなので糖関係の技術に強みを持っています(ケミカルで販売している甘味料ステビアでも同社の技術を使っています)。ある時、ある研究者が“甘くない”糖というのを開発したそうです。正に、普通の糖の品質を逸脱しているのですが、これが大ヒットだそうです。理由は甘みを抑えた和菓子だそうで、最近はあまり甘くしないてくれという要望も多いのだそうですが、単純に砂糖を減らしただけでは和菓子のてりがうまく出なくなるそうで、結局この“甘くない糖”がそこに使われているとのことです。
さて、話を伊那食品に戻すと、開発においてもう一つ心がけていることとして異業種と提携していくようにしているそうです。その為に、ハイテク素材展とか、粉体工業展、エレクトロニクス展といった他業界の展示会にも積極的に出かけていきプレゼンテーションをしているそうです。そこで情報発信すると、相手先からこんな分野に使えないかと相談が舞い込むようになり、さらに共同研究することで視野が広がり、自分たちだけでは考えもつかなかったニーズがわかるといった多くのメリットがあるそうです。うちの研究室も捺染をしようとしていますが、別分野だと色々感覚の異なることもあり、苦労はするかもしれませんがその分勉強になることも多いだろうと思います。
さて、この経済状況が悪い中で今後も企業が発展していこうとするならば、新しい製品、新しい事業を開発していかなければなりません。その時にどういったことを心がけなければならないか。一番は今までと異なった領域に踏み入れなければならないのですから、これまでの固定観念を捨てて違う視点から発想をすること、どんどん他の分野に目を向けることが重要だと思います。急には無理かもしれませんが、少しずつ心がけてみてください。
*参考URL
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20090409/191444/
http://eco.goo.ne.jp/business/keiei/keyperson/58-1.html
これまでの固定観念を捨てて違う視点からの発想をしてみましょう
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先週に引き続き寒天メーカーの伊那食品工業の会長塚越寛さんです。先週この会社の特徴として従業員の幸せと企業の永続を重視する会社であることと開発型企業であることの二点があると思うと述べました。今回は後者の開発型企業ということについて取り上げてみたいと思います。
寒天は主に羊羹やあんみつなどの和菓子原料として使われていましたが、ケーキなどの洋菓子に押されて市場がどんどん縮小していっており、狭い市場の中で多少シェアが高くたってこれでは先が見えている、と塚越さんは感じたそうです。そこから、今後も伸びていくためには、寒天の新しい用途開発が必須だと思い、寒天の研究に本格的に取り組むことにしたとのこと。何かここら辺は紙と同じですよね。競争相手が多いところでは価格競争になってしまいますが、新しく用途開発したところは価格も取れて収益性も高いということです。
その開発にあたって重視されていることとして塚越さんが言っているのは
「寒天の基本物性にとらわれずに、そこからどれだけ逸脱できるかを常に視野に入れろ」
ということだそうです。例えば、寒天は固まる力があるというのは常識ですが、逆に固まらないという特性を持ったものがどうだろうかと考え、寒天の凝固力を抑えた「ウルトラ寒天」をいうのを開発したそうです。これは、化粧品のファンデーションや口紅などに使われているそうです。
余談になりますが、岡山に林原という世界的に有名なバイオ企業があります。変な宇宙人が出てくるトレハロースのTV CMをやっているので知っている人もいるかもしれません。この会社は元々飴屋さんなので糖関係の技術に強みを持っています(ケミカルで販売している甘味料ステビアでも同社の技術を使っています)。ある時、ある研究者が“甘くない”糖というのを開発したそうです。正に、普通の糖の品質を逸脱しているのですが、これが大ヒットだそうです。理由は甘みを抑えた和菓子だそうで、最近はあまり甘くしないてくれという要望も多いのだそうですが、単純に砂糖を減らしただけでは和菓子のてりがうまく出なくなるそうで、結局この“甘くない糖”がそこに使われているとのことです。
さて、話を伊那食品に戻すと、開発においてもう一つ心がけていることとして異業種と提携していくようにしているそうです。その為に、ハイテク素材展とか、粉体工業展、エレクトロニクス展といった他業界の展示会にも積極的に出かけていきプレゼンテーションをしているそうです。そこで情報発信すると、相手先からこんな分野に使えないかと相談が舞い込むようになり、さらに共同研究することで視野が広がり、自分たちだけでは考えもつかなかったニーズがわかるといった多くのメリットがあるそうです。うちの研究室も捺染をしようとしていますが、別分野だと色々感覚の異なることもあり、苦労はするかもしれませんがその分勉強になることも多いだろうと思います。
さて、この経済状況が悪い中で今後も企業が発展していこうとするならば、新しい製品、新しい事業を開発していかなければなりません。その時にどういったことを心がけなければならないか。一番は今までと異なった領域に踏み入れなければならないのですから、これまでの固定観念を捨てて違う視点から発想をすること、どんどん他の分野に目を向けることが重要だと思います。急には無理かもしれませんが、少しずつ心がけてみてください。
*参考URL
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20090409/191444/
http://eco.goo.ne.jp/business/keiei/keyperson/58-1.html
また、「日本でいちばん大切にしたい会社」(坂本光司氏著)にも出てくる 伊那食品工業(長野)を訪問し、社員を大切にする経営、100年先を見据えた経営 などについて、大いに感銘を受けていました。 私たちも再度、日本の経営やリーダーシップの強みと ...
藤原直哉さんが代表理事を務める「日本再生プログラム推進フォーラム」の視察勉強会に参加して伊那市の伊那食品工業(かんてんぱぱ)と菓匠SHIMIZUに行ってきました。 当日の参加者は全国から(遠く沖縄からの団体様も含めて)90名、まさに異 ...
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